Apple Watchの睡眠記録は、毎日の体調を振り返るためだけのものではないようです。
ハーバード公衆衛生大学院の研究者が、Apple Watchで記録された睡眠データを使い、
更年期移行期の睡眠変化を調べた研究結果を発表しました。
今回の研究では、Apple Women’s Health Studyの参加者から集めた94,000夜以上の
Apple Watch睡眠データを分析。
更年期に向かう時期に、夜間に目覚めている時間が増える傾向が見られたとされています。
Apple Watchというと、運動記録や通知、Apple Payのイメージが強いかもしれません。
でも最近は、睡眠トラッキングや健康管理のデータが、日々の体調変化に気づくための
手がかりとして注目されています。
Apple Watchの睡眠データが研究に活用
今回の研究は、Apple Women’s Health Studyのデータをもとに行われました。
Apple Women’s Health Studyは、Apple Researchアプリを通じて行われている
女性の健康に関する大規模研究です。
『9to5Mac』によると、AppleはApple Watchを大規模健康研究に活用しており、
Apple Women’s Health Studyのほか、Apple Heart and Movement Study、
Apple Hearing Studyなども展開しています。
これらの研究は、ハーバード大学、Brigham and Women’s Hospital、
American Heart Association、University of Michiganなどの研究機関と連携して
始まったものです。
今回注目されたのは、更年期移行期の睡眠です。
更年期というと、ホットフラッシュや気分の揺らぎ、
疲れやすさなどが語られることが多いですが、睡眠の変化も大きなテーマです。
「夜中に目が覚める」
「眠りが浅くなった気がする」
「朝起きても疲れが残る」
こうした変化は、本人の感覚だけではなかなか記録しにくいものです。
そこで役立つのが、Apple Watchのようなウェアラブル端末です。
毎晩の睡眠を継続的に記録できるため、日々の変化や長期的な傾向を見やすくなります。
もちろん、Apple Watchが体調を診断してくれるわけではありません。
ただ、自分では見落としがちな睡眠の変化に気づくきっかけにはなりそうです。
94,000夜以上のデータを分析
今回の研究では、Apple Women’s Health Studyに参加した
338人のApple Watch睡眠データが使われました。
分析対象は、25〜59歳の参加者で、その大多数は45〜59歳。
記録された睡眠データは、94,000夜以上にのぼります。
これは、かなり大きな睡眠記録です。
従来の研究では、睡眠についてアンケートで聞いたり、
限られた期間だけ計測したりすることも多かったはずです。
一方、Apple Watchのようなデバイスを使えば、ふだんの生活の中で長期的なデータを
集めることができます。
これが、睡眠トラッキングの面白いところです。
毎晩の睡眠時間だけでなく、夜中にどれくらい目覚めていたのか、
睡眠の質がどう変化したのか、といった傾向を見やすくなります。
Apple Watchの睡眠データは、個人にとっては「昨日よく眠れたか」を知るためのものです。
でも、多くの人のデータが集まると、ライフステージごとの変化を理解する研究にもつながります。
Apple Watchが健康研究の入り口になっている、という点でも興味深い事例です。
更年期前後で夜間覚醒が増える傾向
研究で見られた大きなポイントは、夜間に目覚めている時間の変化です。
『9to5Mac』によると、最終月経の前後12か月で、
多くの参加者が夜間に目覚めている時間をより長く過ごしていたとされています。
また、閉経に向かう18か月の間に、睡眠追跡データがある女性の60%で、
以前の6か月と比べてWASO、つまり入眠後に目覚めている時間が増加し、
平均で7%増えていたとされています。
WASOとは、Wake After Sleep Onsetの略です。
簡単に言うと、眠りについたあとに、夜中に目覚めていた時間のことです。
睡眠時間そのものは足りているように見えても、夜中に何度も起きていたり、
目覚めている時間が長かったりすると、朝の疲れにつながることがあります。
今回の研究では、更年期移行期にこうした変化が見られたというわけです。
ただし、ここで大切なのは、個人差がかなり大きいという点です。
研究者は、閉経移行期や更年期の経験は人によって異なると強調しています。
睡眠の変化が大きかった人もいれば、意味のある変化が見られなかった人もいたとされています。
つまり、「更年期になると必ず眠れなくなる」という話ではありません。
あくまで、Apple Watchの睡眠データから、そうした傾向が見えたという研究です。
自分の睡眠データを見るときも、平均値と比べるより、自分自身の変化を見ることが大事です。
睡眠改善のヒントも紹介
今回の記事では、研究者による睡眠改善のヒントも紹介されています。
更年期移行期の睡眠は、ホルモン変化だけでなく、生活リズム、ストレス、体調、
寝室環境など、さまざまな要因に影響されます。
研究者は、よりよい睡眠のために、次のような方法を提案しています。
⚫︎ 寝室を涼しく保つ
⚫︎ 睡眠時間をできるだけ一定にする
⚫︎ 定期的に体を動かす
⚫︎ 就寝前の水分や膀胱を刺激しやすいものを控える
⚫︎ 寝る前にリラックスやマインドフルネスの習慣を取り入れる
どれも特別な道具が必要なものではありません。
たとえば、寝る前にスマホを見る時間を少し減らす。
夜のカフェインや水分の量を見直す。
寝室の温度を少し下げる。
軽いストレッチや深呼吸をしてから寝る。
こうした小さな工夫でも、睡眠の感じ方が変わることがあります。
Apple Watchで睡眠を記録している人は、こうした工夫をした日のデータを
見返してみるのもよさそうです。
「早く寝た日はどうだったか」
「運動した日は眠りやすかったか」
「夜中に起きる時間が増えていないか」
こうした変化を見ていくと、自分に合う睡眠習慣を探しやすくなります。
Apple Watchは気づきの道具
今回の研究は、Apple Watchの睡眠データが健康研究に役立つことを示す事例です。
ただし、Apple Watchだけで更年期や睡眠トラブルを判断できるわけではありません。
睡眠データは便利ですが、あくまで参考情報です。
眠れない日が続く、強い疲労感がある、ホットフラッシュや気分の落ち込みがつらいなど、
気になる症状がある場合は、医療機関に相談することが大切です。
Apple Watchの役割は、診断ではなく「気づき」です。
たとえば、なんとなく疲れていると思っていたら、実は夜中に目覚めている時間が増えていた。
睡眠時間は取れているつもりでも、眠りのリズムが乱れていた。
運動した日は、少し眠りやすい傾向があった。
こうした変化に気づけるだけでも、生活を見直すヒントになります。
特に30代後半から50代にかけては、仕事、家事、子育て、介護、
自分の体調変化が重なりやすい時期です。
Apple Watchの睡眠記録やApple Healthのデータは、忙しい毎日の中で、
自分の体を後回しにしないための小さなサインになってくれるかもしれません。
まとめ
Apple Watchの睡眠データが、更年期移行期の研究に活用されました。
ハーバード公衆衛生大学院の研究者は、Apple Women’s Health Studyの参加者338人から得た94,000夜以上の睡眠データを分析し、更年期前後の睡眠変化を調べました。
ポイントをまとめると、以下の通りです。
⚫︎ Apple Watchの睡眠データが更年期移行期の研究に活用
⚫︎ Apple Women’s Health Studyの参加者338人を分析
⚫︎ 94,000夜以上の睡眠データを使用
⚫︎ 最終月経前後で、夜間に目覚めている時間が増える傾向
⚫︎ ただし睡眠変化には個人差が大きい
⚫︎ 寝室を涼しくする、睡眠時間を一定にするなどの改善ヒントも紹介
⚫︎ Apple Watchは診断ではなく、自分の変化に気づく道具として使いたい
Apple Watchは、単に運動を記録するだけのデバイスではありません。
睡眠、心拍数、活動量などを継続的に記録することで、自分では気づきにくい
体調の変化を見える化してくれます。
更年期や睡眠の悩みは、人によって感じ方が大きく違います。
だからこそ、平均と比べるより、自分の変化に気づくことが大切です。
Apple Watchの睡眠データは、そのためのひとつのヒントになりそうです。
参照サイト
Researchers at Harvard analyzed more than 94,000 nights of Apple Watch sleep data to better understand how sleep patterns change during perimenopause.
